元自衛官キャリアインタビュー Vol.21
プロフィール
山田 太郎さん(仮名)
現職:大手総合コンサルティングファーム
自衛隊在職時最終役職:海上自衛隊3等海尉
経歴
ーー退職予定自衛官、元自衛官のキャリアを考えるインタビューにご対応いただきありがとうございます。まず、山田さんの経歴を教えていただけますか。
山田さん:一般大学卒業後、海上自衛隊幹部候補生学校から自衛隊に入隊しました。幹部候補生学校卒業後は艦艇幹部として護衛艦に乗組み、その後、民間企業へ転職しました。
現在、大手総合コンサルティングファームにて企業戦略等を担当し、例えば、SDGs(2030年までに解決する必要がある社会課題)を起点とした新規事業創出/組織形成の提案/推進等を行っています。
ーーまさに今求められているお仕事ですね。自衛隊に入隊された背景と在職時の職務内容を教えていただけますでしょうか。
山田さん:もともと国防や安全保障に興味関心があり、直接貢献出来る立場になりたい考えていたため、大学入学前から自衛隊に入隊することは決めていました。当時は、防衛大学校への入校も検討しておりましたが、同時に受験していた国立大学も合格したのでそちらに進学しました。
自衛隊の中でも海上自衛隊を選択したのは、物理的に敵国から攻めてこられた場合に、最初の接点となるのはおそらく海上か航空で、身体適正的にも自分が貢献しやすいのは海上だろうと考えたのが一番大きな理由です。
海上自衛隊では護衛艦に乗っておりました。初級幹部でしたので、本当に「さわり」の部分しか経験出来てはおりませんが、各分隊の所掌業務の遂行、分隊員の人事管理等に携わらせていただきました。海上自衛隊で艦艇勤務ですと、いわゆる「オフィス」も護衛艦内にあるので、航海しない日も陸上の事務所等ではなく船に出勤して仕事をするのですが、知らない方にはびっくりされることもあります。
世界各国を寄港し、多くを学べた海上自衛隊時代
ーー護衛艦内がオフィスなんてかっこいいですね。では、そんな経験の中、自衛隊在職中の思い出・エピソードを教えていただけますか。
山田さん:やはり世界各国を含めた各地での寄港は印象深いことが多かったです。幹部候補生学校卒業後は、約半年かけて世界各国を巡る遠洋練習航海に参加し、その後の部隊勤務では全国各地の港で自衛艦等の展示を行う広報活動も担当していました。
遠洋練習航海では寄港した各国海軍の若手士官と交流し、海軍が持っている万国共通のプロトコールを肌で感じることで、我々が一種の外交官の役割も果たさねばならないという重責を自覚するきっかけになり、広報活動では地元の方々から歓迎を受けて、いろいろとお話しできることは純粋に楽しかったです。
勤務をこなしつつ、その場所の風土を知ることは大変勉強になりましたし、その後の人生の糧にもなりました。
転職活動は職種専門のエージェントを
ーー海上自衛隊では広報活動も通常業務なんですね。転職時の情報収集、スケジュール、準備は、どのようにされましたか。
山田さん:私が転職先として検討していたコンサルティングファームに私よりも早く転職していた同期がいたので、いろいろと情報を教えて貰っていました。
とくに役立ったのは転職エージェントに関する情報です。自衛隊在職中は仕事が忙しく、出航中は通信すら出来ず、なかなか自分だけで情報を得ることが難しいため、転職エージェントを使う方が良いというアドバイスを貰いました。
そのため、基本的には転職エージェントと足並みを揃えながら活動していました。転職エージェントは原則登録料や月額費用は掛かりませんので、登録しておいて損は無いと思います。
職務経歴書添削や面接対策もしてもらえますし、行きたい業種、職種が決まっていない場合は、総合的に紹介をしてくれる大手エージェントへ登録することで幅広く業界や求人案件を教えてくれます。
一方で私のように行きたい業種・職種が決まっているのであれば、専門のエージェントを選択した方がよりきめ細かいフォローをいただけるので良いかと思います。
ーー他に転職準備で留意されていた点はありますか
山田さん:職務経歴書を作成する際に着意として持っておいた方が良いのが、とくに自衛隊からの転職の場合は伝わりやすさを意識することかと思います。自衛隊での業務は、民間企業の人事担当者へは推測としてもイメージしにくい場合が多いので、冗長になりすぎない程度にしっかりと噛み砕いて記載することを意識すると良いです。
また、いたずらに全ての経歴を書くこともあまり得策では無いと思います。たとえば、自衛隊の教育期間は、「職務経歴」としては捉えて貰いにくく、アピールできることも少ないと考えたため、必要な部分を抜粋して記載していました。
教育期間中でも統括の配置等リーダーシップをアピールしやすい経験はあると思うので、そういった部分は積極的に記載すれば良いと考えます。
加えて、文章の中に質問してもらいやすい表現を入れることもおすすめです。ここをもう少し掘り下げて聞いてみたいなと相手に思わせる方法ですね。
たとえば、職務経歴書に関して、敢えて全てを噛み砕いて説明し切らず、少しわかりづらそうなキーワードを入れると面接時の質問・アピールの機会を作ることが出来ます。
総合コンサルティングファームでの仕事内容
ーー質問のしどころをあえて作っておくことですか。では、現在のお仕事とご自身の今後のキャリアをお聞かせください。
山田さん:コンサルタント職種でも企業等のビジネス側の戦略や新規事業立案を担当しています。
具体的には、SDGs(2030年までに解決する必要がある社会課題)を起点とした、新規事業創出および組織形成の提案や推進支援を行っています。
第二新卒枠で転職したことから、私は入社後、コンサルタントとして必要とされるスキル/マインドセットに関し、一から教育を受けました。
コンサルティング企業の中でも、弊社はいわゆる即戦力以外は必要ないというような「Up or Out」の姿勢を取るのではなく、仕事を丁寧に教えるというスタンスを取っている企業です。
その為、入社後まず会議の議事録を取る、検索エンジンを使ってリサーチをするなど、下積みの中で育成を受けました。現在は企業担当のコンサルタント職として勤務しています。
今後のキャリアは経験とスキルを獲得し、まずはマネージャーを目指すことになるかと思います。
自衛隊で培った強靭な体力、メンタルの評価
ーー山田さんが考える、自衛官だった事で活用できる能力、マインド、スキル等を教えてください。
山田さん:コンサルタントに求められる能力は各業界やプロジェクトへのキャッチアップの早さといった、いわゆる「頭」の部分に加えて、肉体的・精神的な体力も含まれるかと思います。
「頭」の部分は採用時に全員最低ラインは突破出来ていると見做されているはずで、スタートダッシュの時点で極端な差は付けにくいかと思っています。ただ、体力や付随するメンタルについては、自衛隊で培ったものが活かせるのではないでしょうか。
体力やメンタルがあることをフックにして、仕事の機会をいただきやすいことは「経験」の部分でも跳ねるかと思います。
働き方改革等で、特に初対面の若手メンバーにはどこまで仕事を依頼してよいのか悩む上司も多い中、「何でもやります」という姿勢を示す上での担保として自衛官の経歴が活きたと考えています。
ある程度高い体力・メンタルを持っている、仕事を振っても大丈夫な奴だと思っていただき易かったかと考えています。
また、初級幹部として経験してきた対人コミュニケーション能力は活かしやすいと思います。
民間企業で考えると係長相当の役職を任せていただけるで、連絡や調整で多様な方々と関わることになり、必然的にコミュニケーションの経験値は蓄積しますし、場面に合わせた対応も同年代と比して訓練されていると思います。
再就職、転職する自衛官に向けてのアドバイス
ーーコミュニケーション能力は企業でも相応に求められますね。最後にこれから転職をする人に向けてのアドバイスをお願いいたします。
山田さん:まず、転職を決め切っていない人へ伝えたいのは、転職はあくまで手段のひとつだということです。転職は将来的なゴールを見据えて、自分自身が何をやりたいのか、それは自衛隊では達成し得ないのかをしっかり考えて行動に移した方が良いと思います。
ゴールそのものに「正解」は無いかと思います。金持ちになりたい、転勤や異動をせず一か所で仕事をしたい等、何でも考えられるのではないでしょうか。
自分自身の置かれた環境や自分自身の変化によって変わることもあるでしょう。ただ、いずれにしてもゴールはしっかり定めて、手段である転職をゴールにしないように注意して欲しいと思います。
何をやりたいかをしっかり考えて、その実現手段の1つとしての転職と考えないと、転職後に後悔してしまうこともあります。
その上で、既に転職を決めている人が自分がやりたいことの達成に向けてチャレンジすることは素晴らしいと思いますし、その際は、最大限の成果を得られるように自分の強みをしっかり考えて人にアピールできるように準備して欲しいと思います。
何が自分の強みか分からない方もいるかと思いますが、自分で自分の強みはなかなか分からないものです。そのため、履歴書、職務経歴書をクイック&ダーティーに書いてみて、自分の経験と自分が考える強みを棚卸し、友人や転職エージェントに見て貰うことが良いと思います。
意外にどんな経験でも強みに言い換えることが出来るもので、ブラッシュアップする中で気付けなかった自分の強みが見えてきます。
ありがとうございました。山田さんへメンターとしてコミュニティで直接話を伺えますので、ご希望の方は下記よりお申し込みください。