元自衛官インタビュー

高級幹部自衛官から大手IT企業へのキャリアとマインドセット

Veterans Channel キャリアセミナー Vol.19

「元1等空佐中村泰三さんの自衛隊からのキャリア形成の考え方」

自衛官キャリアコミュニティ「Veterans Channel」で開催した中村さんのキャリアセミナーをまとめています。自衛官一選抜で1等空佐まで昇進し、エリート街道を進んでいた中村さんがなぜ民間企業へ転職され、どのような考えでキャリア形成されているのかを余すことなくお伝えいただきました。

プロフィール
中村 泰三さん
現職:外資系IT物流会社 General Manager 
自衛隊在職時最終役職:航空自衛隊1等空佐

ご経歴

ーー本日はお忙しい中、自衛官のキャリア媒体「Veterans Channel」のキャリアセミナーにご登壇いただきありがとうございます。まず司会より中村さんのご経歴を紹介いたします。

司会:中村さんは、防衛大学校卒業。卒業後、航空自衛隊へ入隊し、地対空ミサイルの管制官として勤務。

在職中、現場での組織運営と災害派遣等部隊運用で10年、防衛大学校教官2年、陸上自衛隊へ出向したのち、防衛省本省で政策的調整や意思決定に携わることに4年勤務の他、部隊指揮官・基地司令として2年勤務され、最終的に1佐でご退職されました。

その後、自衛隊で培った知識と経験が、民間との比較の中で、何が共通し、何が異なるのかを自ら検証したいとしてホテル会社を経て、現在は外資系IT物流会社General Manager職にて、物流センターのセンター長として勤務されています。

自衛官でも民間企業で十分に活躍できることを自ら実証したかった

ーーまず一つ目の質問ですが、1佐まで昇進されて民間企業へご転職された理由を教えていただけますでしょうか。

中村さん:いくつか理由があります。

もともと自分の人生で、一つの仕事だけに拘っているのはつまらないなと思っていました。若い頃から辞めどきを考えていました。それは自衛隊の仕事が嫌だったからではなく、他の可能性をさらに探求したり、世の中に貢献できることがないかという理由です。

もう一つは、一通り自衛隊の中で、部隊指揮、防衛政策に関わって、東日本大震災災害派遣も貢献できました。自衛隊で僕がすべき仕事は一通りやりきったなという思いもありました。

最後が最も退職理由として大きいですが、元自衛官が企業でも使えることを実証したいという思いです。

自衛隊にいると自衛隊の中でしか生きていけないと思っている人たちや、潰しが効かないとか思い込んでいる人たちがいます。

僕はそんなことは無いと思っていました。これだけ自衛隊でやったのだから何かしら役に立つことがあると。

例えば米軍は、同じ職種に6年いたら、昇進するかやめるかしないといけないので、結構民間企業に出ていくんですね。それでも十分活躍しているし、大企業幹部は元軍人がゴロゴロいます。

そのため、僕もそうした気持ちで自衛隊も民間で通用しないとは必ずしも言えないのではないかということや、1佐で民間企業へ飛び出すという人たちもあまりいなかったので、まず僕がやってやろうという気概で飛び出しました。

公務員でもこれだけやっていれば、民間でも通用することを証明したかったという思いがあります。

ただ、やはりその階級での退職は自衛隊へも迷惑もかけたかもしれません。退職当時は、2回目の防衛省勤務をしていて、班の総括をさせてもらっていたのですが、非常に大きなプロジェクトがあり、そのプロジェクトに関わっていました。

10年以上なかなか進まない難易度の高いプロジェクトでしたが、これをやり切ったら民間企業でも通用する、と決めごとにして取り組みました。

しっかりやり切りましたが終わった時は7〜8キロ痩せてたんじゃないかな。それくらい大変なプロジェクトでしたが、空幕長はじめ高級幹部にプレゼンし、空幕長からもよくやったと褒めてもらい無事終えました。

その1週間後くらいに辞めますと伝えたら、皆卒倒していましたね。先輩からは、「何かあったのか?」心配してくれていました。ただ決してNegativeな退職理由では無かったため、最終的には納得してもらいましまた。

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ーー強い意思がありますね、最後の退職理由はより強い気持ちがあるように感じます。そこまで考えられる理由は何でしょうか?

中村さん:先ほどの話ですが、自衛官やっていると同期や同僚とかから辞めたいけど辞められないと、話の端々に出てきます。辞めたいが潰し効かないよね、と決まって言うんですよね。

何を根拠に言っているだろうかと思っていましたし、そのまま続けた結果、上司とうまくいかないといった人間関係で潰れてしまう人もいるんです。

確かに民間企業でも職務や仕事上、なかなか辞められないというのはあると思うんです。ただ、自衛隊から民間企業へいけないというような固定観念だけはぶっ壊してやろうという決意でした。

ーーご経験のもとでの、ご自身が証明してやろうというお気持ちだったんですね。今のお仕事も現職自衛官セカンドキャリアへ勇気付けられるお仕事をされていると思いますが、どのようなお仕事をされていますか。

中村さん:私の所属している会社は、いくつかの大きな部門に分かれており、私はその中の物流部門に所属しています。

物流センターは全国に数十か所あり、商品を仕入れて、インターネットから注文を受けて、その商品をお約束どおりお届けできるよう業務管理して出荷します。その中で品質管理や人の管理を並行して行います。

僕はそのうちの一つの倉庫を管理しています。現場のワーカーさんも含めて1,000人以上の人が働いてくれており、そこのマネジメントをしています。

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自衛隊経験者の人のマネジメントの強み

ーーすごい人数のマネジメントですし、転職難易度の高い就職先だったと思いますが、どのようなところを評価されて入社されたのでしょうか。

中村さん:Leadership人のマネジメントだと思います。組織をけん引し、人を動かすことはTrainalbleではありますが、非常に時間がかかることですね。これらは自衛隊つまりMilitary をおいてほかに学べる場所は少ないですからね。

実は民間企業よりも自衛隊の方が人のマネジメントって難しいんですよ。一見上意下達がはっきりしてそうですが、自衛隊は公務員ですし、Militaryという面では命を預けることになるので、信頼と信用がなければついてきてくれません。一方で、民間企業は就業や給与上の特に心理的な縛りが強く、言えばやってくれます。

このような違いもあり、組織や人をLeadしていくという側面での能力は貴重だと思ってもらったのだと思います。何社も受けましたが、最後の副社長や社長面接で落とされることが多く、「こいつどう使ったらいいのか?」と思われていたと思います。

そのような意味で現在の会社での採用は、すごいChallengeだったでしょうし、複数の面接官がいましたが、彼らに心から感謝したいですね。

民間企業で活躍するために必要なのは、数字を理解すること

ーーなるほど。民間企業に出られて苦労する点はどこでしょうか?自衛隊と違うところはこうしたところで、苦労することを教えてください。

中村さん:数字の関連性を学ぶことがなかったため、表面上の数字がどのように繋がって、どこをいじればどのように変化するのかは正直、最初全く分からなかったです。

当然今は、分かりますが、この数字から将来を予測するという、Metricsの関連性の感覚は、身に着けるまでに3年はかかりましたね。数字は過去のこと、現場は現在のこと、そして将来を知るすべはこの数字の関連性なので、これができないと組織運営、正しい意思決定は厳しいですね。数字の関連性が読めないと全てが起きてからの対処になり後手になってしまいますから。

逆に、これが分かれば、先読みをして正しい指示が出せるので、仕事が面白くなりますね。数字を明確にしてそれをベースに動かすことでこんな変わるんだと。

将来に対して正しい判断と指示が出せる、これこそがLeadershipですから。

また、プロセスの工程管理、工程解析ができるようになったので、それは他でも通用するし、これはおもしろいと思います。

あと一番違うと感じるのはスピードですね。こうしろと言われた数字が次の週には全く違う数字になっていたりします。そんなことなので、あれ?これって先週と数字が違うなという顔をしていたら、上司から「数字が違うと思っているだろう、いいんだよ、違うんだよ」っていう感じで、状況に合わせたスピード感に面食らっていましたが、最近はもう慣れました。

というより私がいうほうになりましたね。

ただ、数字を予測して当たると、変化やスピードが違うことにうまく合わせて予測した施策があたるとすごい嬉しいですね。

ーー人のマネジメントが有効だったことで、何か具体的に教えていただけることありますか。

中村さん:僕が関わった物流センターでの話になりますが、そこは、採用コストが非常に掛かっていました。理由はシンプルで離職率が大変高い現場でしたので、その採用にコストが掛かっていたんですね。

そこで、どの層の離職が高いのかという点を分析した結果、就業半年以内に辞めているケースが非常に多かったんです。離職者の7割はそうした方々でした。

なので、回答は単純です。

じゃあ、新規採用をやめればいいじゃないかと人事には伝えました。結局辞めてしまうのであれば、その主要因である新人の採用を抑えよう、と。並行して今いる人たちの離職の理由を探って、それを抑えることにしました。

この順番が重要なんです。

原因に対して対策をまず直接打つことです。そしてそれを仕組みで回すことが必要です。

そうしたところ、1年後には離職率が50%改善されました。翌年にはそこららさらに半減させました。なので、ほとんど離職しなくなったんですよね。

当然離職が減ると、今いる人たちの熟練も上がるんですよね。そうすることによって、生産性が上がって、品質も上がります。当然ですよね、同じ人が長く働いてくれているのですから。

現場も5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を整え、人を変えることや組織運営は私の得意とするところなので、事故も減り、品質、生産性も上がり、健全な組織運営が実現する。このようなことを経て、結果をしっかり出し、社内でも評価してもらいました。

ーー離職に焦点を当てることとは大変興味深いです。具体的にそこはどのような仕組み化されたんでしょうか。

中村さん:数字と現場の両方を見て、そのつながりを見ることが重要ですね。

順番としては、まず、現場の把握と掌握に集中しました。現場の人たちの意見を聞いて、例えば、5Sがなっていないと現場の統制が取れていない、危険やムダがあることを意味していますので、そこを整えることをしていきました。

あとは、コミュニケーションの促進ですね。着任当初は、バースデイパーティを毎月やっていたんですが、形式的な感じだったんです。タオルとカードを渡して、はい、終わりみたいな。とにかくパターン化されており、あまり従業員の満足度向上に貢献していないことがすぐに分かりました。

先ほどの話通り、離職はCost的損失を生みます。新人を採用すれば、一人前になるまでに、採用やトレーニングコストで数十万円かかります。

なので人を辞めさせないということは、結果的に、組織全体の生産性を上げることになり、PositiveなCostインパクトが生まれます。人を辞めさせない、これは人を大切にすることは、こうした意味もあるのです。

で、何をしたかというと、毎月、ドーナツやシュークリームを食堂で配ってパーティをしたんですよね。それって一見コスト増なのですが、本当にそう思いますか?

例えばドーナツ一つ100円として200個配っても、全部で2万円くらいですね。これを12か月やっても24万円。1,2人の離職を抑えれば、あっという間にPayします。さらに、それやることによって、エンゲージメントが高まって、自分たちは大事にされているんだというマインドになりますし、目的である上下間のコミュニケーションが円滑化されます。

現場の下の人からの意見の汲み上げができるかで組織の生産性ってかなり上がるんです。

そんな取り組みから現場を歩いていると、皆、気軽に声をかけてくれるようになりました。僕が気づかないことも教えてくれて、より改善、改良につなげることが出来るわけです。

組織上の上位者に対しては、自分はそう思っていなくてもやはり話しかけづらいものです。そうした垣根を取り払うことができましたね。

自衛隊で培った資質、能力で企業にて活用できること

ーー数字で示されますとその通りだなと思いますね。そうしたコミュニケーション能力含めて自衛隊の時に培い、民間企業で使える能力はなんでしょうか。

中村さん:先ほどの人のマネジメントの他、組織運営能力ややり抜く力です。やり抜く力は

GRIT(Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念))です

かね。その中でもガッツが必要です。

ただし、最初からガッツのみではうまくいきません。まずはプランがあり、実行段階でガッツが有効です。

物流センターのプランで言えば、来年の入出荷の量が出てくるんですが、その数字がまず正しいのかを確認します。サプライチェーン部門からおおよその数字が出されても、それを鵜呑みにはしません。詳細な数字や傾向はやはり現場のほうが抑えていますからそこは見なくてはいけません。

物量が決まれば、どれくらいの生産性でやっていき、そのためには人や労働時間が必要なのかが決まります。そうするとそこから必要人数が明らかになります。

なので、僕の仕事で言えば、そうした根拠の数字を正した上で、数字のプランニングをしていきますが、毎年、基本10%くらいの成長を求められるので、数字達成にガッツが必要なんです。

すごい大変な数字を求められる世界なんですが、ある面正しいと思っています。とんでもない数字を設定されるとみんな普通では達成しなため、ジャンプ、イノベーションをしようとします、つまり飛躍した成長ができるんです。

チャレンジをさせ続けることに最後ガッツが必要な状況を作るのは重要だと思いました。そうすることで、プランBやリスクを適切に考える。この辺りはさすが外資だなと思います。

欧米人はリスクをチャンスと考えるが日本人は怖がってしまうような傾向があります。彼らもプランBをしっかり持っています、だからやみくもに恐れないのですね。適切なリスクマネジメントをしてチャレンジをするんですよね。

再就職、転職をする自衛官に向けてのアドバイス

転職時の3つの着意ポイント

ーーチャレンジ精神を醸成される文化があるということですね。所属企業が成長し続ける理由が分かります。転職の時に考えると良いことはありますか?

中村さん:3つあると思います。

まずは、就職する企業のカルチャーフィットが重要だと思います。僕が現在の会社に入社しようと思ったのは、その理念、カルチャーが自分に合うと思ったからです。

私の会社には、行動理念、Leadership Principlesがあり、全員がそれに沿った話や行動をします。

2つ目は、成長できるかです。企業へ転職したら、公務員ではないため、そこが全てじゃないと考えていた方が良いと思います。そのような考えが自分の成長に繋がりますし、キャリアを上げていくことでは、ずっと所属し続けるという考えも良いですが、ここで仕事をすることで今後も成長し続けれるのか、を考えていくことが良いと思います。

最後は、給料です。給料で言うと僕は自衛隊いた時に1000万円ほどでした。再就職したホテルベンチャーでは800万円でした。ただ、知り合いのコンサルの人から、泰三さんの価値は1500万円だと、それ以下のところにはいくなと言われました。給料は自分の価値なので、それはしっかりと目指すべきだと言われました。

絶対じゃないと思いますが、それでも自分自身の価値と考え、評価軸として給料もしっかりと上がることを意識しながらキャリアを上げていくことは重要だと思います。

ーー最後に再就職や転職をこれから考えている自衛官へアドバイスをいただけますか。

中村さん:怖がらずにチャレンジしたら良いのかなと思っています。最終的には自己満足なので、ご自身が自分の人生満足して全うできるのかが重要だと思います。

困ったら必ず助けてくれる人がいますので、相談をしていけば良いのでぜひチャレンジして欲しいと思います。

ーー本日はありがとうございました。

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