元自衛官インタビュー

即応予備自衛官と格闘家とのキャリア両立の仕方

プロフィール
立石 裕善さん
現職:総合格闘技ジム「ドブイタファイトスポーツジム」インストラクター
兼陸上自衛隊即応予備自衛官三等陸曹
自衛隊在職時最終役職:陸上自衛隊陸士長

元自衛官キャリアインタビュー Vol.29

経歴

ーー本日は退職予定自衛官、元自衛官のキャリアを考えるインタビューにご対応いただきありがとうございます。まず、立石さんの経歴を教えていただけますか。

立石さん:横須賀の高校卒業後に、東海大学工学部に入学しましたが、自分のやりたいこととは少し違ったため中退。その後、ITの専門学校へ再入学しました。

専門学校卒業後、ITエンジニアとして、トヨタ系企業やドコモ関連会社で働いていましたが、専門学校の頃から始めた格闘技をもっと突き詰めたいと考えた結果、26歳の時に自衛隊へ入隊。

当時、自衛官候補生の制度が出来てから2期目で、新隊員教育を武山駐屯地と朝霞駐屯地で受けた後に、武器科へ配属されました。

武器科は、もともと車好きで、自衛隊の各種装備を担当できることに魅力を感じ志望し、弾薬を担当していましたが、もともと格闘技をやりたいと思い入隊したものの、職種的にあまり受け入れてもらえないと分かりました。

それでも、駐屯地で先輩を誘って練習していましたが、より格闘技を突き詰めていきたい思いから1任期、2年勤務し退職しました。

ただ、自衛隊を続けたいという気持ちも強かったため、その後、予備自衛官として勤務。今は即応予備自衛官三等陸曹として、自衛隊でも勤務しつつ、横須賀で格闘技ジムのインストラクターをしています。

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ーーなるほど、大変興味深いです。格闘技で食べていこうという目標だったので、格闘技中心の生活だったのでしょうか?

立石さん:そうですね。自衛隊退職後は、格闘技の練習を中心に、昼はバイトしつつ、夜は格闘技ジムに行って練習して、実力を付け試合に出るという生活を送っていました。

格闘技の可能性を感じて自衛隊から格闘家へ

ーーどれくらい試合に出られて、戦績もぜひ教えてください?

立石さん:総合格闘技(MMA)は、プロとアマチュア合わせて、15試合出て、その内、アマチュアは7試合4勝で、プロでは8試合5勝1分でした。その他、柔術、サンボやグラップリングの試合を含めると30戦以上戦ってます。

今はコロナの影響で、出られる試合が限られていますが、今後も試合は出たいと思っています。

そのため、格闘技ジムのインストラクターとして勤務しながら、指導をしつつ、自分の練習もしています。

ーー強いんですね!格闘技を突き詰めたく、自衛隊入隊したとのことですが、格闘技をやるにもいろいろ道はあったと思いますが、自衛隊入隊を選んだ理由はなんでしょうか?

立石さん:入隊しようと思っていた当時は、ITエンジニアとして、PCに向かって、10時間近く仕事をする生活を送っていました。送ってみて気付いたのですが、僕にとっては、このままこの仕事を一生していくのはムリだなと。

人って、仕事向き不向きで、ずっとやり続けられない仕事ってあると思うのですが、ぼくにとってITエンジニアの仕事がそうでした。

それでも3年は勤務して、その間、柔道も習っていた為、警察へ行くことも考えたりしました。

ただ、調べていくうちに、自衛隊の格闘錬成隊に興味を持ち、入隊した後にそこに行きたいという思いで入隊しました。

ーー格闘錬成隊へは行けたのでしょうか?

立石さん:結果的には自衛隊で錬成隊にいくことはできませんでした。希望を出しましたが、後方支援部隊の配属になったこともあり、枠がほぼなかったんです。

ただ、自衛隊という仕事を経験することで、仲間や組織の一体感という雰囲気はすごく自分にあっており、格闘技をもっと突き詰めたい思いと、自衛隊へ所属をしたいという気持ちの両方を達成することを考えていました。

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予備自衛官と格闘家の両立

ーーそこで、予備自衛官として勤務しつつ、格闘技の道へ進まれたんですね。

立石さん:そうです。当時は格闘技を中心の生活を考えていましたが、振り返ってみると、定職につきつつ、やってもよかったかなと思っています。もっというと自衛隊から再就職の際は、在職中に仕事を決めてからでも格闘技が出来たなとは思っています。その方が安定しますしね。

ただ当時は、練習時間の確保が難しいかと思い、結果バイトをしながら格闘技の練習を朝晩するという生活をしていました。

今は、ご縁あって格闘技ジムのインストラクターとして、自分の練習もやりつつ、指導や会員さんのレッスン管理等を行っていますので、自分としては一番よい環境です。

予備自衛官から即応予備自衛官へ。自衛隊退職後は、予備自衛官をオススメします。

ーー立石さんは、いまは予備自衛官から即応予備自衛官として、自衛隊へ貢献しています。仕事との両立は大変ではないですか。

立石さん:いまの職場は比較的融通をきかせてもらえるので、そこまで負担では無いです。負担なのは、訓練前に髪の毛を黒に戻すことくらいでしょうか。

僕は自衛隊退職後すぐに、予備自衛官になりました。継続して自衛隊に関われ、かつ予備自衛官は、年間5日間の訓練で毎月4,000円もらえます。しかも、訓練に行けば8,100円の手当ももらえるため、報酬面でもありがたいですよね。

ちなみに自衛官退職後1年未満に、出身自衛隊の予備自衛官に採用された場合の初年度は1日間で、その金額をもらえるため、自衛隊退職後の方は予備自衛官の応募をお勧めします。

2年目からは、年間5日間の訓練参加義務が生じますが、内訳はおおむね下記の通りです。

1日目:被服貸与
2日目:体力測定
3日目:実弾射撃訓練
4日目:職務訓練
5日目:精神教育・被服返却

最初はこうした関わりでもよいと思っていましたが、正直、自衛隊を経験しているともっと訓練へコミットしたいと思うようになりました。

そのため、予備自衛官は3年で、その後即応予備自衛官を志願しました。現在は即応予備自衛官として、6年目になりますが、先日三等陸曹に昇進し、同僚とも公私で良い付き合いをしています。

ーー同僚というと、即応予備自衛官だと、固定のメンバーで隊が編成されるのでしょうか?

立石さん:ほぼそうなります。即応予備自衛官は予備自衛官と違って、実戦部隊の一つとして編成されているんです。年間30日の勤務が必要になり、配属されている隊員もほぼ固定になります。また、職種転換も希望が出せますので、通常の部隊と人事も似ていますよね。

僕の場合、当初普通科に配属されていましたが、元々所属していた武器科へと職種転換をしてもらいました。

また、手当も16,000円/月になり、招集手当は10,000円ほどになりますので、手当面でも手厚くなります。同僚は元自衛官がベースなので、訓練も充実しますし、中には元自衛官からフランス外人部隊に行っていた隊員もいたりと通常なかなか知り合えない仲間と知り合えることもできました。

ーー手当ありきではないですが、予備自衛官でも年間訓練込みで9万円くらい手当になりますが、即自だと50万円くらいですか!ただ、訓練の30日間確保が大変そうです。

立石さん:年間30日間の訓練ですが、一気に30日間行うわけではなく、4日間や3日間の招集と分けて招集をされ、30日間一気な拘束ではないため、職場の理解があれば、そこまで大変では無いと思います。

ただ、訓練は現役自衛官に近いところまでやりますので、大変は大変ですね。

僕も即応予備自衛官になってから初年度に検閲を2回経験しましたが、通信部隊の有線を配線し続けて、金曜の夜から土曜の朝まで寝ずに配線するという現役の時を彷彿とする訓練も経験した時は辛かったです。しかも野営訓練は毎年ありました。

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自衛官格闘家としてのキャリアの研鑽

ーーなるほど、手当相応の訓練が期待されるわけですね。ではご自身の今後のキャリアをお聞かせください。

立石さん:即応予備自衛官として、自衛官人生を歩みながらも今所属しているドブイタファイトスポーツジムで管理やマネジメントを経験していきたいと思っています。

現在はコロナでなかなか試合ができませんが、今後もプロ格闘家として、さらに高みを目指していきたいと思っています。

今年で35歳になりますが、MMAファイターとしては、経験も体力も備わり、最も脂が乗っている年だと思っているので、プロ戦で戦いたいですね!

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ーー是非応援に行かせてください!ここから立石さんが考える、自衛官だった事で活用できる能力、マインド、スキル等ありましたら教えてください。

立石さん:総じて、気合ややり切る力は自衛隊を経験すると培われるのじゃないかと思います。

新隊員教育乗り切るだけでも、普通に高校・大学を過ごしてきた人は経験しないですからね。

もちろん、根性論で乗り切れるほど、社会は甘く無いですが、それでも若い頃にそうした経験をすると経験者同士であるとよく分かりますが、ポテンシャルはあると感じますね。

また、予備自衛官を経験して思いましたが、基本教練しかり、団体や組織の一体化は自衛隊経験者は良い意味でうまくまとまろうとします。予備自衛官では民間の方もいますが、少し違った傾向が見て取れますね。

僕自身の経験で言えば、班長動作として人をリードしますが、部下を持つことにより、マネジメント経験を得ることができました。

とくに経験値として得られたと感じるのは、班員の長所や短所を把握して、与えれたタスクに応じて、個々の能力にあったことを当て込んでいくことがあります。

限られた時間内に期待通り、もしくは上回る仕事を提供するには、そうした班員の能力や付いてきてもらえるように自分自身も律することという思考が身についています。

転職・再就職自衛官へのアドバイス

辞めるならしっかりと準備をしましょう

ーーなるほど、やり切る力とマネジメント能力ですね。では、最後にこれから再就職・転職をする人に向けてのアドバイスをお願いいたします。

立石さん:僕自身経験して思いましたが、自衛隊は、どうしても日常生活に自由度が制限されますよね。士、曹だと外出するにも許可が必要だったり、そもそも結婚しないと原則外に住むことができなかったりしますよね。

確かにその分、衣食住の環境は良いですし、お金も貯まりますが、世間一般を見回すと自由で良いなと感じることが多いと思います。

ただ、そこでもっと自由になりたいみたいな理由で辞める人が多いんですが、辞めるなとは言いませんが、明確な目標とやりたいことが無いと、外に出て苦労してしまうかもしれません。

なので、まずは自分が自衛隊を辞めてもやりたいことができるまでは、続けてみることが良いと思います。

正直、このままでよいのだろうかや他の可能性を考えたいことも出てくると思います。そうのような時は遠慮なく、有給使い、長期休暇でも取ってみて、本当に辞めるべきなのか考えた方が良いと思います。

なんだかんだ、自衛隊は人には優しい組織です。僕自身もそうありたいと思って、自衛隊でも過ごしてきましたし、そうした人に優しい環境が好きで辞めても、即応予備自衛官として、勤務しています。

自衛隊を辞めても職業はありますが、一時的な気持ちでエイッと辞めてしまうと、戻ることは難しいことと、なんとなくで辞めてしまう人たちの多くがその後、転々としてしまっていることもよくみます。

まずは、自分がやりたいことを見つけてもらうことが良いと思います。

ーーありがとうございました。立石さんへメンターとしてコミュニティで直接話を伺えますので、ご希望の方は下記よりお申し込みください。

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