元自衛官インタビュー

LINE株式会社で人材を育成するやりがいと自衛隊経験の生かし方

元自衛官キャリアインタビュー Vol.5

プロフィール

笠岡司さん
現職:LINE株式会社 人材開発チーム/LINE STYLEチーム マネージャー
自衛隊在職時最終役職:陸上自衛隊2等陸尉

経歴

ーー本日はお忙しい中、退職予定自衛官、元自衛官のキャリアを考えるインタビューにご対応いただきありがとうございます。まず、笠岡さんの経歴を教えてください。

笠岡さん:自衛隊からのキャリアですが、防衛大学校(防大)を卒業して幹部任官後、4年半ほど勤めて2009年に退職しました。ちなみに防大では、陸上要員通信工学科2大隊ハンドボール部でした。

防大は学校全体だと約1,600人近くいますので、自分の所属を細かく伝えるのが定例なのです。また、4年生中期には、中隊学生長をやっています。

ーー防大あるあるなんですね。幹部候補生学校後の職種はどちらですか。

笠岡さん:幹部候補生学校後は、後方支援連隊輸送科に配属され、自衛隊在職時は、BOC課程(幹部初級課程)、POE課程(幹部普通英語課程)に進みましたが、思うところあり、自衛隊を退職。

退職後は、まず世間を広く知りたいと思ったため、独立して、他企業の製品やサービスの営業代行をやっていました。

ーー退職のタイミングも退職後も思い切ったキャリア転換ですね。

笠岡さん:そうですね。ただ、勢いで独立したという経緯もあり、なかなかうまく行かず、半年で資金枯渇してしまいました。

どうしようか迷っている中で、その当時一緒に仕事をしていた仲間が人事系のコンサルティングのサービスを立ち上げるので手伝ってくれないか、と声をかけてもらい、そこからは会社員になりました。

その会社では、サービスの立ち上げから、5人くらいの規模でスタートしました。丁稚から初めて、途中会社が売却される経験もしながら、最終的には、法人向けのサービスの事業責任者とその会社の執行役員をやっていました。

その後、別事業体で事業責任者として、税理士法人を立ち上げに関り、事業計画、業務フロー作成、採用の事業立ち上げに関わりました。そして、その事業の立ち上げから軌道まで載せて、一息ついた際にキャリアを改めて考え、元々興味のあった人材開発の道に進もうと思い、人材開発のコンサルティング会社に転職しました。

やりがいのある仕事でしたが、企業内の人事ではなく、外部から人材開発の支援をしていたため、社内で組織人事に関わりたいと思い、LINEに転職し、現在は人材開発チーム/LINE STYLEチーム マネージャーとして勤務しています。

ーー営業から人事にキャリアを転換されたのはなぜでしょうか。

笠岡さん:事業立ち上げをいくつか経験する中で、採用から教育含め人で苦労することが多く、組織における人の役割の重要性を強く感じていました。

その為、人に関わる領域をやっていきたいと思うようになり、職種を人事に転換したというのがきっかけです。税理士法人の事業責任者以降は、組織内の人に関わる仕事をしています。

入隊の背景と在職時の職務内容

ーーなるほど、組織に関心を持たれたのですね。自衛隊時のキャリアをお伺いしたいと思います。まず自衛隊に入隊された背景と在職時の職務内容を教えていただけますでしょうか。

笠岡さん:自衛隊キャリアは防大からになりますが、防大を選んだのは、学費がかからないことと、戦闘機のパイロットになりたかったからでした。戦闘機マニアだったわけではなく、当時は視力がよく、それを活かして他の人とは違うことをやりたくて、見つけたのが防大でした。

幹部候補生学校卒業後は、輸送科職種になり、都内の部隊に配属されました。そこからは、輸送小隊の小隊長と、運用訓練幹部を任されて仕事をしていました。

小隊長としては訓練を計画、実施したり、演習場で検閲を受けたりと、小隊長らしいことをしていました。運用訓練幹部としては、輸送隊全体の訓練・保全のことを担当する役割で、年間の訓練計画の策定や隊全体の訓練を計画・実施をしていました。

ただ、僕が所属していた部隊は、実任務よりも、訓練が多く、もう少し現場で活躍したいと思っており、また、組織が大きすぎるため、もう少し分かりやすく社会に貢献したいという気持ちがありました。

笠岡さん

自衛隊在職中の思い出・エピソード

ーー実任務が少ない部隊だったのですね。それも民間企業へ転職しようと思われたきっかけでもありそうですね。また、自衛隊在職時の思い出深いエピソードを教えてください。

笠岡さん:2007年の中越沖地震で災害派遣に従事したことです。給水支援を担当する幹部として派遣されたのですが、本部には大量の情報が入ってきて収拾がつかないような状況でした。

そんな中でも、情報を整理しつつ、不完全な情報の中で判断を進めなければならない状況や雰囲気は、演習とは違う、とてもリアルな体験でした。

現場では着任当初から、隊員がどこにいるか分からないし、無線、有線含めて情報がいろいろ入ってきて、文字通りぐちゃぐちゃな状況でしたが、日頃の意識している状況把握と情報整理を意識して、何とか任務をこなしていました。

私たちの部隊は、小学校で被災者へ給水支援活動を行いました。ただ、机上と大きく違い、現場では、活動した後に水でぬかるんでしまい校庭が使えなくなってしまう可能性があるため、給水場所に敷物を敷かなくことを考えたり、では何を敷き、それはどこから調達するのかという細かいこともどんどん起きて、都度解決していかなくてはいけません。

そうした優先順位ややるべきことの整理をつけることが大変でした。自衛隊では日ごろから訓練や演習で、状況や情報の整理を行っていたので、時系列で様々な情報が入ってきてもすぐに対応することができましたし、そうした訓練の成果が出せたなと実感しています。

LINE株式会社での仕事内容

ーー日ごろの訓練も習慣化されれば、いざというときも実践できるということですね。それでは現在のお仕事について聞いていきたいと思います。LINE株式会社では、どのようなお仕事をされていますか。

笠岡さん:人材開発の担当者としては、新卒やマネージャー向けの研修を企画したり、講師として登壇したりしています。研修はいろいろな企画を組み合わせるため、外部の研修専門企業の打ち合わせやその他、いろんな人事諸施策の運用や改善に関わっています。

また、全社集会などの会社ぐるみのイベントを担当するチームでマネージャーをやっているので、そういったイベントの統括をしています。社員の皆さんの前に出ることも時々ありますね。

ーー仕事の一日の流れを教えてください

笠岡さん:出社してから、一日の業務を整理して、午前中にミーティングが1、2つほど入っていることが多いため、それに出席して、マネージャー向け研修などの各種定例会議に出てということをやっています。

研修を担当していますので、社内調整で会議やミーティングの出席は多いと思います。空いた時間で、研修用の資料作成や社内公募を担当している為、諸施策の改善や資料作成を行っています。

ーー社内業務が中心のお仕事ですね、お仕事のやりがいと今後のキャリアをお伺いできますか。

笠岡さん:やりがいは、非常に大きいです。そもそも人材育成をやりたくて入社したため、自分が担当している施策や研修内容が良かったとフィードバックをもらうと準備等大変なものの、開催して良かったと感じます。

マネージャー向けの研修のワークをした後に、出席したマネージャーから、今後の仕事にも使えるし、チームで横展開をするのに非常に役に立ったよと個別にフィードバックを受けることも多いです。

今後のキャリアは、人材開発、組織開発で知見を積んでいきたいと考えています。LINEは、業界最大手のインターネットサービスですので、そうした最前線で仕事ができることは、いろいろと業界最新情報が入りますし、最新の施策も経験できます

そうした僕の関わる施策により会社が成長し、きちんと生き残れるための人たちを育成し、結果会社に貢献できるような仕事をしていきたいと思っています。

ーー非常にやりがいのある仕事ですね。続いて、今後のキャリアについてお伺いしたいですが、まずなぜ自衛隊から民間企業へ再就職されたのでしょうか。

笠岡さん:もっと視野を広げて活動したい、と考えたからです。幹部自衛官としての仕事はやりがいもありましたし、そこでしかできない体験がたくさんあることもよくわかっていました。

一方で、自衛隊の外の人たちと話をしたときに、自分は世の中のことを全然知らないこと、そしてそうした民間企業の仕事に興味深いことが自分自身沢山あることを知りました。

どちらも魅力的でしたが、一度しかない人生だし、先のわからないことにチャレンジした方が死ぬときに後悔しなさそうだな、と考えて民間に進みました。自衛官は基本進む道が同じですが、もっと違った分野で自分自身の力を試してみたい、チャレンジをしたいという気持ちが強く、やるなら若い時期にと転職を決意しました。

ーー自衛隊在職時の転職活動は制限されていたかと思いますが、就職情報の収集、スケジュール、準備活動等はどのように準備されましたか。

笠岡さん:私は、退職後に最初独立したので、再就職活動ではないですが、民間の基礎知識が無さすぎたため、終業後に民間の交流会に、自分の名刺を作って紛れ込んで情報を収集していました。

それをきっかけに、世の中にどんなビジネスがあるのか、自分なら何ができるのかを考えていました。よく行っていたのは異業種交流会ですが、初めは自衛官が何しに来たのだろうという印象を持たれていましたが、独立時の仕事はこうした活動で得られましたし、経済や民間に関する知識習得につながりました。

今はインターネットも普及しているため、情報収集しやすくなった反面、ネット記事を読んだだけでは分からないことが多いため、リアルで人から話を聞くということは重要だと思います。

リアルでしか知りえない情報や判断する際に必要な情報あるため、再就職活動をするのであれば、インターネット、リアル両方で進める事が良いかと思います。

人事担当者視点の面接での心構え

ーー直接会って話を聞く事も重要ですね。また、笠岡さんは採用する側、される側両方を経験されてきていると思いますが、採用の要因があればお聞かせください。

笠岡さん:正解は無いですが、自分がやれることと企業に求められていることが一致することではないでしょうか。

評価されるポイントは、企業との相性が一番重要なため、絶対値ではなく、相対値だと思っています。その為、自分がどういう意思決定でキャリアを積み重ねてきたのかを、自分の意思も含めてしっかりストーリー立ててお話ができることは、非常に重要だと思います

それを評価し採用するのかは、会社が考えますので、まずは自分自身のキャリアの考え、強みの整理とそれをきちんとストーリー立てて語れるかは自分自身のキャリアを考える上でも必要ですし、企業側からの印象も良いと思います。

ーー一貫性をもったキャリアに関して自分の考え、ストーリーをまとめていることですね。また、自衛官だった事で活用できる能力、マインド、スキル等ありましたら教えてください。

笠岡さん:まずは自衛官共通の能力として、体力があること、規則正しい生活ができること、良い姿勢をとれること、アイロンが上手なこと、連帯責任を含むチームワークを知っていることなどは、どんな仕事にでも活用できると思います。

多少事務能力が劣っていても、それはちょっと勉強すれば身につきます。でも、上記のようなことはなかなか一朝一夕には身につかないし、それを訓練する場もそれほどありません。

これは本当に財産だと思います。民間企業に出て思うのは、意外にそうしたことができていない人が多いと感じます。

自衛官であれば、当たり前のように清潔感を気にできて、清潔感を求められていることを気にすることができる。基本的なことですが、どの仕事をしていてもプラスの評価になると思います。

また、戦術の思考過程はとても役立っています。あの思考過程は、意思決定の理由を合理的に説明するうえで非常に洗練されたもので、どんな場面でも使えます。

戦術の思考過程とは、状況判断の思考過程として、任務分析をして状況及び行動方針を決めて、彼我の行動方針を列挙し、情報、比較のための重要な要因を導き出して、意思決定をすること

ーー戦術の思考過程がスラスラと出てこられて、常に意識されているのがうかがえます。

笠岡さん:上司に企画の方針や方向性を伝えるのに論理的かつ合理的に報告するためには、この思考過程は常に意識しています。

企画を出す際に、状況を抜けなく漏れなく考え、企画の目的を達成するため、複数案を出しますが、仮にA案、B案があったとして、A案を勧めますという際、その時になぜA案なのか?を順序だてて説明することが求められます。

僕らのチームは今この状況にあり、施策の目的を考えるとA、B案があるが、考えるべき要因は予算と効果で、今回の施策の目的を達成するには、効果を優先するのか、予算を優先するのか、これらを考えるとA案を選択することが合理的妥当性であるように上司に思考過程を提示します。

民間企業では、日ごろ何となくやっていると思いますが、自衛隊の場合、幹部や陸曹は教育で教えられますし、陸士もそうした考えで部隊が動いていることを理解しますので、こうした合理的な意思決定の提示や考え方には慣れていると思います。

再就職、転職をする自衛官に向けてのアドバイス

ーーやらされるじゃなくやる意識の作り方ですね。また、最後にこれから再就職をする人に向けてのアドバイスをお願いいたします。

笠岡さん:自衛隊での経験は、活用できるところがいっぱいあります。また、自衛官であったこと自体が、自分への信頼を嵩上げしてくれたり、覚えてもらうきっかけになります。

これは、経験した人しかもっていない貴重なリソースですので、自信をもって活用してほしいです。僕は、自己紹介時に行軍をしていた時に撮影した自衛官時の写真をよく使っていますがウケがいいです。

また、民間の仕事自体は、その仕事に関連する知識やスキルを身に着ければできるようになるので、その時出来るか出来ないかは、そんなに心配はいらないと思います。

そこに負い目を感じてやりたいことから目を背けるのではなく、自分が興味を持てること、やってみたいことに真っ向から挑戦してみてもらいたいです。思ったよりうまく行くことが、きっと沢山あると思います。

民間では通用しないのではないかと思うことやすぐにうまくいかないことは多いかもしれないですが、挑戦してもらいたいです。

山の中で戦車動かしていただけ、総火演にて時限弾で山の形を表現していただけでそれが、民間企業でどんな役に立つのだろうと思うことがあるかと思いますが、抽象度を上げて考えると、民間企業でも役立つことやアピールできることは非常に多くあるので、そこは臆することなく、民間企業に出るという意思決定をしたのであれば、自信をもってもらいたいと思います。

意識をもって考え、行動すればきっとうまくいきますので、是非頑張ってください。

ありがとうございました。笠岡さんへメンターとしてコミュニティで直接話を伺えますので、ご希望の方は下記よりお申し込みください。

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