元自衛官インタビュー

自衛官からドライバーへ転職後、ITエンジニアへのキャリアの変え方

高橋 真悟さん
現職:ITエンジニア
自衛隊在職時最終役職:陸上自衛隊陸士長

元自衛官キャリアインタビュー Vol.26

経歴

ーー本日は退職予定自衛官、元自衛官のキャリアを考えるインタビューにご対応いただきありがとうございます。まず、高橋さんの経歴を教えていただけますか。

高橋さん:高校卒業後に自衛隊入隊。神奈川県の武山駐屯地で新隊員教育を受け、久里浜駐屯地の通信科へ配属。曹候補士として3年間勤務し、退職しました。

自衛隊在職中に大型免許取得していたため、退職後は、まず運送会社へ2年勤務。ただ、腰を痛めてしまい、その病気療養中にたまたまWindows 98が販売されるというニュースを見ました。そこで、これからはパソコンやインターネット時代だと思いたち、PCを買い、独学でパソコンやプログラミングの勉強をして、システム開発会社へ転職。

自分の思った通りのキャリアチェンジができたのですが、開発系企業で、激務だったことや、システムを作る側からシステムを使うエンドユーザー側の立場でいろいろ見たいという思いもあり、その後、当時あまりIT化されていなかった介護やタクシーを経験しました。

現在は、そうしたエンドユーザーの視点を得て、再度システムエンジニアの仕事に従事し、IT化されていない分野にITを提供できるような仕事をしています。

ーー自衛隊に入隊された背景と在職時の職務内容を教えていただけますでしょうか。

高橋さん:自衛隊へ入隊したのは、もともと父が自衛官だったため、高校卒業後の就業選択肢として漠然と考えていました。当時、父から写真や職場の話を聞く中で、仕事としてやりがいがありそうと感じていました。

また高校の時、アマチュア無線部で無線にハマり、無線に関係するような仕事をしたいと考えていたところ、自衛隊の通信科職種があることを知り、受験。

通信科へは、かならず希望が通るとは限りませんでしたが、前期教育隊の班長がたまたま通信科だったこともあり、希望通りの配属となりました。

通信科は基地通信と野外通信の2種類がありますが、私は野外通信でした。

野外通信なので、通信機器の構造や通信方法等を勉強する以外にも、演習時は作戦部隊の通信やネットワークを構築する必要があり、演習場を駆け回って大変だったことを覚えています。

また、方面通信群配属だったため、基幹系の通信のネットワークを任されていました。基幹系とは、災害時、民間の通信インフラが断絶されている時、NTT等通信企業が復旧するまでの間を持たせるための任務でしたので重責です。

コミュニケーションが円滑に取れないと、組織は動けませんから。そうした責任感の中、大変充実した勤務をしていました。

私が在籍していた際に、阪神淡路大震災が起きました。当時休暇で帰省中に、切り上げて部隊へ戻り、部隊全員が被災地への支援命令のため待機していました。結果的に私は出動命令は出ませんでしたが、いまかいまかと緊張の中過ごしていたことは強く記憶に残っています。

自衛隊を辞め、民間企業へ挑戦した思い

ーー大変に重要な任務ですね。そうした中、なぜ自衛隊から民間企業へ転職されようと思ったのでしょうか。

高橋さん:曹候補士で入隊し、陸曹を目指していたんですが、陸曹候補生試験に落ちて陸曹教育隊に行けませんでした。

そして何度か陸曹候補生試験を受けるうちに、このまま仮に陸曹になったとしても、民間企業のこと何も知らないで人生が終わってしまうのは果たして良いのだろうかという疑問も湧いてきました。

もちろん仕事は充実していましたし、やりがいも感じていましたが、定年退官まで勤務した結果、自衛隊しか知らない私が、はたして年を取ってからいきなり民間に出て適応できるのだろうか?という思いもあり、退職を決意しました。

先任曹長からも辞める前に、民間企業は自衛隊の厳しさなんて比にならないくらい厳しいぞ、とも言われていました。

ただ、それにも増して、自衛隊で培った経験で、企業へ挑戦したいという気持ちが勝り、転職を決意しました。

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自衛隊と企業の”厳しさ”の違い

ーー辞めない方がよかったと思うこともあったということですが、自衛隊と民間企業の厳しさとはなんでしょうか?

高橋さん:自衛隊の厳しさは、訓練、規律、精神の厳しさがありますよね。出来るまでやらせるし、出来るようになるまで徹底的に付き添うという考えが強いと思います。

一方、民間企業は、出来ないのであれば、どう出来るようにするのかを自分で考えなければならず、ある程度のサポートはしてもらえるものの、自衛隊ほど付き添うということはありません。

また、自分で努力しないとか、自分で出来るようになる事を考えられない受け身な人は、放置される厳しさがあると感じます。

自衛隊はよく面倒見が良いと言いますが、全体のベースが同じレベルで統制されていないと戦いの評価が出来ないからですよね。ですので、できるまで訓練するし、判らない、理解できないという人を放置することが基本的に無いと思います。

民間企業は、逆に出来るところを伸ばしたり、強みを利益に変えていく姿勢です。

そのため、できない、会社の利益にならない人材は、放置されて結果退職を余儀なくされるようなことも往々にあると思います。つまり、自分自身が個として、独立して生きていかないと行けない厳しさがあると思います。

自分から動かない限り、お膳立てされることは無いですし、それを常にずっと考えて行動していかなくてはいけないということです。

チームと言いつつ、かなり個人の力量や競争とそれに対応し続けないといけないのが、自衛隊と企業の違いだなと思いますね。

ーーそうですね、自衛隊は確かに出来ないままにはしないですからね。では、転職時の就職情報収集、スケジュール、準備等必要だったと思います。どのような準備をされましたか。

高橋さん:自衛隊の就職援護課は使わずに自分で探し、土日に面接をしてもらい決まりました。

就職援護課を利用することもできたのですが、自分の気持ちとして、これから退職する自分が就職援護課に面倒を見てもらうのは申し訳ないという思いが強く、自分で探しました。

最初に運輸業を志望したのですが、それは大型免許があったので、免許をベースに仕事を探しためです。自衛隊の就職援護課を通しても、紹介はしてもらえたかとも思っています。

また、援護課に求人を出す企業は、自衛隊の理解がある会社である可能性が高いため、予備自衛官訓練参加等もしやすいのかと思います。

フリーランスITエンジニアとしての働き方

ーー予備自衛官は一定期間仕事を休まないと行けないですからね。いま現在、どのようなお仕事をされていますか。ご自身の今後のキャリアをお聞かせください。

高橋さん:現在は、フリーランスのシステムエンジニアをしています。

エンジニア系の仕事ですと、よくありますが、いろいろ案件を紹介してもらえるエージェントへスキルシート、職務経歴書を登録しておくと、仕事のマッチングをしてもらえるんです。

数か月~数年などのプロジェクトごとの契約になりますが、今まで得てきた自分の知見を強みにできることや契約期間中もこうしたことをして欲しいと、クライアントから要望があるため、コンスタントに仕事がありますね。

こうしてフリーランスで仕事を受けつつも、今後のキャリアを考えると自己成長のため、現場での開発や保守作業メインで従事しつつ、プロジェクトマネジメントや管理系ポジションができるようなキャリアを作っていきたいと思っています。

いまは、エンジニアが売り手市場ではありますが、今後は、高いスキルでの開発や保守作業もできつつ、同時にそうしたプロジェクトマネジメントもできるような人材を求められているため、他者との差別化でもそうした経験を積んでいきたいと考えています。

そうすることで、私の視点では、より仕事をいただきやすくなります。また、企業視点で見た場合、例えば作業要員とマネジメント要員を1人ずつ別々に雇うと仮に月間100万円かかるところは、両方のスキルセットがある人材を1名雇えば、月間80万円にできるといった金銭的なコストやコミュニケーションコスト削減、プロジェクトの一貫性にも繋がります。

ーー高橋さんが考える、自衛官だった事で活用できる能力、マインド、スキル等ありましたら教えてください。

高橋さん:何かやるということになった時の物事を達成させる完遂能力、やり切る力が高いと思います。

仕事に対する真面目さ、真摯さみたいなものでしょうか。ただあまりに真面目すぎて、言われたことだけをやるような人ではダメですが、そのバランスは企業で働いてみることで、こんな感じかと調整出来ると思います。

また、リーダーシップ能力も高いと思います。民間企業でも、リーダーシップを求められますが、なかなか、学んでできることではないですよね。

自衛隊経験者は、その辺を自衛隊である程度学べている方が多いように思います。実際、企業に出て最初感じたのは、リーダーシップと言いつつ、それを意識している人や実行しているが、少ないという印象でした。

そのため、私が民間企業に入りたての新人の頃でも、周りができないもしくはやらないのであれば、私がやれば良いんだという考えになりました。まさに自衛隊で教わった

「積極進取」という考え方

です。

もちろん、リーダーシップを突然やりますといっても聞き入れてもらえなかったと思いますが、しっかり自分の知識、経験をつけた上で、徐々に声を上げていき、組織内では人を牽引できる人間だと評価してもらえたことでそうした良い機会をもらえました。

そうした視点では、自衛隊と企業の違いで感じることは、自衛隊だと上の人が言うことが絶対ですが、民間企業では意見を発信することが重要だということです。

「士」だと言われたことを、言われた通りに忠実にこなすことが評価となりますが、民間企業では違います。

言われた通り行動するだけの人は求められないので、言われたことプラスアルファの事を常に出来る様に自ら考え行動し、道を切り開くと言った考え方への変化が必要だと思います。

再就職、転職する自衛官に向けてのアドバイス

転職する際に意識したいこと

ーー積極進取、良い言葉ですね。これから再就職をする人に向けてのアドバイスをお願いいたします。

高橋さん:辞めようかどうか迷っているくらいのレベルであれば、退職しない方が良いです。トータルで考えると自衛隊は公務員ですので、福利厚生や働き方も守られている側面が多いです。

対して、民間企業はあくまでも営利を目的とする組織なので、利益を生み出さないと守ってもらえませんし、利益追求が大前提なので、その違いは認識すべきです。

例えばCMや広告などで人を大切にするとか、人材=人財などと言っているのは、そのまま鵜吞みにしてはいけません。

ですから、自衛隊と同じ感覚で民間に来てしまうととても大変な思いをすることとなり、辞めなきゃ良かったなと辛い思いをするだけです。

ただ、やりたい事が明確にあり、辞めることを心に決めている人へ伝えたいのは、自衛隊で培ったことで使えることは確かにありますが、基本的にはスキル等で何か使えることは特定の職種、例えば警備員等を除いて、基本的に無いと考えた方がよいです。

例えば、自衛隊は教えてくれて、伴走する形で進歩もさせてくれます。

つまりこれは極論を言うと最悪受け身でも何とかなることを意味しますが、民間企業は自分から進歩しないとだれも気にかけてくれません。受け身的な考え方では、どんどん辛くなるだけです。

つまり、自分から主張して、行動して、その組織が必要としている価値が何かを把握して、企業に対して価値を作り出し提供できる人でなければ、価値はないと思った方が良いです。

ただし、先ほど自衛官の持ちうる能力でも伝えましたが、自衛隊でやってきた経験やマインドの部分は企業で活かせることは多くあると思います。

他にやりたいことがあり、民間企業へ挑戦される方は自衛隊での働き方、生き方と企業でのそれとは大きく違うこと、そして何が違うかを意識、理解しつつ挑戦していってほしいと思います。

ーーありがとうございました。高橋さんへメンターとしてコミュニティで直接話を伺えますので、ご希望の方は下記よりお申し込みください。

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